新人の信頼
私の職場には今年4月、新しい仲間が2人増えました。2人とも医療機関経験者ですが、新しい職場は今までとは違ったことが多く、戸惑いもあるようです。
私はこの2人の新人さんを見ていて、開業後の自分の姿と重ね合わせてしまいます。
私が今の職場に勤務するようになって14年目、そして前職の医療機関勤務を合わせると25年近くになります。
自分の人生の半分近くを医療機関勤務でやってきたことになります。
良くも悪くも長い年月を同じ仕事に充ててきたのですが、今後私は新人として新たな分野(行政書士)としてやっていくことを決めました。
今は開業準備中で、まだ新人とも言えないのですが、思いだけは先走っています。
同じことの繰り返しで得た信頼
長く同じ仕事をしていたからと言ってそこでスキルを身に着けたとはいえないのかもしれませんが、その場での繰り返しがスキル?に繋がっていることもあるのではないかと思います。
例えば、定期的に来院している患者さんの服薬内容、主病名、家族環境などの把握はカルテを見たうえで話しをするのが基本となりますが、長くその患者さんを見ていることによって、カルテを見なくてもある程度その場で対応できるようになります。
患者さん側からすれば自分が言っていることをその場でわかってくれるということは、待ち時間が短くなることにも繋がり、そしてなにより自分のことを把握してくれているという信頼感みたいなものが生まれ、人と人の繋がりを強くするような気がします。
現職、私の新人時代
私は今の職場に勤務するようになった時のことを思い出してみました。前職でも同じ仕事をやっていたのですが、新しく職場が変われば当然そこでは新人です。
事務的なことはある程度分かっていたとしても、患者さんが抱えている病気など詳しいことは分かりません。そこでの窓口対応にも時間がかかっていたことを思い出します。
また、私は患者さんのことを把握するといった努力よりも、事務員として実務的なことを中心に仕事をしていた感じがします。
とにかく時間との勝負(待ち時間の短縮)を考えていて、気持ちに余裕がなかったので、患者さんの話しをゆっくり聞くこともできず、その場の事務的な会話だけしか出来なかったと思います。
初心を忘れてはいけないとは思っていても、知らず知らずのうちに忘れる?というより気にしなくなっていたというのが正直なところです。
「わからない」の意味を考える
何故、今更過去を思い出してみようと思ったかと言うと、それは現職場に入った2人の新人さんが言ったこんな言葉がきっかけになっています。
「○○さんがあんたじゃわからないから、横山さんを呼んでほしいと言っています」「私達ではだめなんです」と言ってきたのです。
今私は、後任者のサポートを主の仕事としてやっています。要するに裏方なので窓口にはあまり出ることはありません。
そんな私を呼んでくれるのは私にとって本当に嬉しいことなのですが、私の気持ちは複雑でした。
なぜなら、私も今後新しいことを始めようと考えているのです。そうなれば私も新人なのです。「あんたじゃわからないから」と言われる立場になるでしょう。
そんなことを言われないように努力すれば良いのではないかと思われるかもしれませんが、私の言っているのは単に「わからない」という言葉だけを指しているものではありません。
私が患者さんに「わからない」からと呼ばれても、多くの場合私でなくても対応できることの方が多かったのです。例えば、先日呼ばれて窓口に出ると、患者さんは私を見るなり、ワイシャツのボタンをはめてほしいと言ってきたこともありました。私でなければわからないということではないのです。
多分その患者さんはいつも通りの会話をしたかったのに、私がいなかったことで「わからない」と言っただけなのかもしれないと私は思いました。
それを見ていた2人の新人さんはなぜ私達にはわからないの?と思ったでしょう。
そのとき、自分が新人だったときはどうだったのかと思ったのですが、思い出すと同じようなことがあった記憶がよみがえってきました。
私は2人に私も同じだったことを話し、「時間が必要なのかもしれないね」と言ったのですが、それは同時に自分へ言った言葉でした。
これから新しいことをするのであれば、きっと今回のようなことが私にもあるでしょう。
そんな時、焦らずやるためにも「新しい者が、相手に受け入れてもらうためには、それなりの月日もかかるということを覚えておきなさい」とここで自分自身に言っておきたいと思いました。
記事:横山 弘美
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